解き放つ
- FROZEN
- アナと雪の女王
- 冰雪奇缘
どれも大ヒット映画のタイトルだけど、個人的には邦題が最も好きだ。
映画の内容を端的に表現していると思っている。
私はストレスが溜まると、この大ヒット映画の劇中歌『Let it Go』をエンドレスで聞いて解消するようにしている。
各国語バージョンで見るのも大好きだ。
興味深いのは、どの言葉で聞いても歌詞の内容と決心の力強さが伝わってくるところと、どの国の吹き替えの方も、歌唱力が同レベルに極めて高いということだ。
だから、25カ国語バージョンで見ても、違和感なく最後まで歌の世界を堪能できる。
それで面白いと思っているのが、この歌の中国大陸版と台湾版で歌詞が異なるという点だ。
どちらも中国語(中文)ではあるが、歌詞の内容が違う。
よって、それぞれのサビの部分の歌詞もまったく違う。
- 英語:Let it Go
- 日本語:ありのまま
- 大陸版:随它吧
- 台湾版:放開手/譲他走
で、日本語で説明するのは難しいのだが、大陸版は英語のLet it Goの意味とほぼ同じだ。
しかし、台湾版は異なる。
直訳すると「手を離す」だが、「解き放つ」という意味で、つまりは今までの自分を「解き放つ」と言っている。
そして、最も盛り上がるサビの部分で「譲他走」(≒ Let it Go)と歌い上げる。
そこで大陸と台湾の歌詞を比べてみると、英語版と日本語版の関係に似ているな、と気付いた。
大陸版は、英語の歌詞をほぼそのまま、忠実に中国語に置き換えていると言っていい。
一方の台湾版は、日本語版のように英語の原詩に解釈を加えて、独自の世界観を見せている。
しかし、大陸の教育を受けている若者にはそれが許せないらしく、こちらの動画サイトの台湾版『Let it Go』のコメント欄には、
- 台湾の翻訳は酷すぎる。香港の方がマシ
といった批評も少なくない。恐らく、原詩を見た英語がわかる人にとっては、「解釈=余計なもの、原詩に忠実ではなく間違い」との思いがあるのだろう。
しかし中には、
- 大陸版よりずっといい
と評価する声もある。これも恐らく、「映画のテーマに沿っており、その世界観をより深く表現していて良い」といった思いがあるのかも知れない。
こうやって見てみるとやはり、大陸と台湾ってやっぱりまったく違う文化風土なんだなぁと思わざるを得ない。
(まあ、パスポートも政治体制も違うから、違って当然なんだけどね。日本では混同しちゃっている人の方が多いと思うけど。)
私は台湾人の友達を持っていたのが元々の始まりで、後から大陸人との違いを知ってショックを受けたタイプだから、この辺の相違は「中台あるある」としてとても興味深く思っている。
中国語訳については、大陸版と台湾版で優劣はないと思っている。
日本版が「ありのまま」と訳したように、両者の違いはそれはそれで良いし、どちらも歌詞の内容も素晴らしいという点に異議はない。
ただ、映画を実際に劇場で見た私個人としては、エルサの心の動きを思うと、「解き放つ」と歌っている方が好みだ。
私も、エルサのように今までの自分を「解き放」って、飛躍したいものだ。