みみずくDiary in China (だった)

中国留学からニッポンに帰国したみみずくによる普段着の徒然日記

たくさんの、「ありがとう」

昨晩、眠りに就こうかとベッドに入り、いつもの悪い癖でスマホでニュースを見ていて衝撃を受けた。

「浅田真央選手、引退」

眠気も吹き飛んで、本当なのだろうか、誤報ではあるまいかとネットの波を掻き分けてみるもどうやら本当らしいとわかり、きっと多くの人々も同じであったように眠れなくなってしまった。

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私が一番最初に浅田真央選手を認識したのは、彼女が15歳の若さでフィギュアスケート全日本選手権優勝を果たした時だ。

軽々とトリプルアクセルを跳んで全日本選手権で優勝したものの、年齢規定でトリノ五輪への出場条件を満たしていないため、浅田選手は出場が叶わないことをニュースで知った。

当然、マスコミが押しかけて浅田選手にインタビューをし、何とか言質となる言葉を彼女から引き出そうとしていたけれど、あどけない顔で

「(五輪出場に関する年齢規定自体を)知らなかったので、(トリノ五輪に)出られなくても特に何とも思いません」(大意)

ときっぱりと答えていて、きっとこの選手は相当メンタルが強いに相違ない、と思った。

 

その後ほどなくして、TVCMでよく見かけるようになった。

一番印象に残っているのは、(今は亡き)NECのノートパソコンValue StarのCMだ。

「浅田真央、15歳です」

とあどけない笑顔で名乗った後、当時の彼女の代名詞のひとつであった、片手ビールマンスピンを氷上でクルクルと決め、それを見た玉木宏さんと現在は国会議員である山本太郎氏が

「カワイイ!」

と顔を見合わせる、というような内容であったと思う。

 

長い手足に整った顔立ちと、外見にも恵まれた浅田選手は、おっとりとした性格も相まって

「カワイイ」

と評されることが多かったように思う。

私はスポーツのことは全くわからないけれど、それでも、浅田選手が「カワイイ」だけの選手でないことは明らかだったように思う。

 

まず挙げられるのは、メンタルの強さだ。

採点方法が度々改定され、難易度の高いジャンプを跳んでも成功しない限り点数に反映されなくなった。ジャンプ失敗時のリスクを減らすため、高得点を狙える無難なプログラムに変更するよう内外の批判を受けたときでも、一貫して自身の美学である「難易度の高いジャンプを完璧に跳ぶこと」を貫き、実際に世界の大舞台で成功させてきた。

ライバルと目される外国人選手と常に比較され、「浅田選手には“色気”が足りない」などと、よくわからない日本の年配タレントたちの、全く以て的外れかつ下品な批判を受けても、何ら臆することがなかった。

ライバル選手の疑惑の判定を受け、マスコミが浅田選手から言質を引き出そうといくらインタビューしても、「判定は判定です」との姿勢を崩すことはなかった。

私生活で肉親の不幸を経験し、マスコミに追い回され、失言を引き出そうといくら粘着されても、決して他人を責めることは口にせず、すべての結果は自身の責任であると答え続けていた。

 

次に上げられるのは、素人目に見ても美しいスケーティングとポジショニングの正確さだと思う。

恐らく、浅田選手の身体の柔軟性はバレエダンサー並(或いはそれ以上の)ものがあるのではないかと思う。

だからこそ、誰が見ても美しく、他の選手からも「お手本」と言われるほどの演技で人々を魅了しているのだと思う。

 

また、親しみやすい人格から、日本中の人々を始め、世界中の人々に愛される選手であったと思う。

浅田選手が試合に出るとなると、TVの前で手に汗握って応援し、演技に夢中で見入った人も少なくはあるまい。

もうほとんど、「親戚の子」という感覚で、感情移入しつつつい応援したくなる、それが浅田選手の魅力でもあるように思う。

 

浅田選手のことは、知れば知るほど世界中の誰もが好感を持つ、稀有な存在であったと思う。

それは、このように一貫して潔く、清潔で高尚な競技姿勢と人格にもあると思う。

 

印象深かった、

「浅田真央、15歳です」

のTVCMからたった11年。もう11年。

浅田選手は現役引退を表明したけれど、浅田選手が世界中のスケーターに尊敬され、世界中の人々を魅了し続けている稀代のスケーターであることは、これからも変わらない。

 

なかなか通えなかったであろう大学を卒業するのも良し、大学にこだわらなくとも、指導者や解説者の道に進むも良し、これからも浅田真央さんを好きであり続けることは、私も多くの人々同様、変わらない。

 

浅田真央選手には、たくさんの「ありがとう」の言葉を贈りたい。