「輝夜姫」と「Never Let Me Go」と色々(毒も吐くよ!)
突然昔のことを思い出すことってないですか?
海外で一人暮らしをしているからか、私はしょっちゅうなんだけど、突然思い出したのが、今日のタイトル。
「輝夜姫」(かぐやひめ)は、漫画家清水玲子さんの作品で、タイトルからもわかるように、あの日本一有名であろう物語、「かぐや姫」(日本最古の仮名文字物語「竹取物語」)がモチーフとなっている。
清水さんの描く絵は繊細でとても美しく、しかもストーリーがとても文学的で、実は昔から大ファンだ。
そして、カズオ・イシグロ著の「Never Let Me Go」。邦題は何だったかな、とググったら、「わたしを離さないで」とあった。
あの有名な映画、「日の名残り」の原作者としても有名なイシグロ氏のこの作品、数年前にはキーラ・ナイトレイ主演で映画化もされているから、ご覧になった方も多いかと思う。
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で、本題なんだけど、この2作品って内容っていうか、テーマが似ていません?
「輝夜姫」にはまって読みふけっていた頃、連載が終了して、しばらくしてから「Never Let Me Go」を読んだ気がするが、読んだ当時はかなり驚いた。
今、自分の記憶が間違っていなかったか再度ググってみたが、「輝夜姫」の連載開始が1993年、連載終了が2005年。「Never Let Me Go」の発表も2005年。
すごい偶然だったんだなぁ、と思う。
興味深いのは、文学的な作品を描く漫画家と、文学者の作品題材が類似しているという点である。
やっぱり、日本の漫画ってクオリティ高いと思う。
“漫画”と言われると、海外では子どもの読むものと思われがちであるが、日本の場合、少女漫画や少年漫画など、さまざまなジャンルにおける漫画の、総合的なクオリティが高い。
ストーリーが哲学的であったり文学的であったりと、想定読者が子どもの漫画であっても、決して“子供騙し”な内容ではないところが特筆すべき点である。
とまあ、この辺はいいとして。
また思い出したのは、いつだったか、カズオ・イシグロ氏のドキュメンタリーだったか、インタビューだったかを見た時のこと。
イシグロ氏は、幼少期に父親の仕事の都合で渡英、そのまま英国に留まることとなったことなどを話していらっしゃった。
とても印象に残っているのは、成人後、英国籍を取得した際のエピソードである。
正確な詳細は覚えていないが、大意は以下の通りであったと記憶している。
- 「幼少期に渡英し、日本人ではあるが、日本語も話せず習慣もわからない。英国の教育を受けて育っており、日本人としてはもはや生きていけないことを自覚し、英国籍を取得した」
- 「ノスタルジックな感情を日本に抱いてはいたが、実際に日本に行っても、言葉がわからないし、文化もわからない」
確かに、この状況で“日本人”として生きていくことに違和感を覚えるのは無理もないし、英国籍取得に至るのはごく自然で、何の疑問もない。
いくら母国であっても、そこは言葉も文化も理解できない“異国”で、友人さえいないのであるから。
そして、この状況を、日本に永住していらっしゃる外国人の方に当てはめてみると…。
あれ?!
違和感しか無くね??
なぜ言葉も理解できない“母国”にしがみついていらっしゃるんでしょうね?
母国で暮らすのは言葉もわからないし知人もいないし嫌、でも日本人になるのも嫌、あくまで日本で“外国人”として生活したい、日本人には絶対になりたくないけど日本人と全く同じ社会保障や権利が欲しい…って、都合が良すぎやしませんかね?
実際に保持している国籍と自己認識上の国籍、教育を受け実生活を営む国なんかが一致していて初めて、社会的にも安定して幸せに暮らせるんじゃないのかなぁ。
どっちつかずの状況を打破し、安定して幸せな暮らしを求めるのなら、これらを一致させるよう、変なナショナリズムに翻弄されない方がいいと思うけど…。
私の場合、
日本で教育を受け、日本で育ち、自己認識は日本人で、国籍も日本。
しかし、外国で生活する際、その国では“外国人”として生きていくと思うし、その国の政治や社会保障の対象外であっても、当然だと思うし、特に不満もない。
だって、外国人だし、今現在の状況がまさにそうだし。
外国人の分際で、よその国のことにあれやこれや口出ししたいとも思わない。母国じゃないんだし。
「不満があるなら、頑張れや、アンタ(=その国の国民)たち」って感じ。(つまりは他人事)
ま、これらを意図的に一致させないってことは、何らかの旨味があるからだ、と邪推されても仕方がないよねぇ…。
あ、ちなみに、「The Remains of the Day」の日本語訳「日の名残り」は、とても好みなんだけど、「Never Let Me Go」の「わたしを離さないで」はううん…ちょっと、いや、でも…。
原題のままでも良かったんじゃないかなぁ、なんて個人的には思っております。