“抗日”はエンタメ☆
こちらでは、毎クールの新ドラマに必ず「抗日ドラマ」が含まれており、放送される時間帯から言っても、どうやら日本の“月9”的な扱いである。
そしてその抗日ドラマも、局とタイトル、出演者を変えて毎日のように放送されている。しかしまあ、抗日ドラマなので、内容は似たり寄ったり。
ステレオタイプな日本人が出てきて、人民に暴虐の限りを尽くす。しかし、勇気を持った人民が立ち上がり、極悪非道の日本人を完膚なきまでに叩きのめす、というのが主たるストーリーである。
まあ、いくら出演者やタイトルが違ったところで、判で押したように同じ内容であるのだが、すこぶる人気らしく、飽きもせず新ドラマが繰り返し放送される。
そして、日本人に対するバイアスが永遠に再生産されるシステムとなっている。
なるほど、当局にとってはかなり合理的な人民統制術である。
ある日本人留学生から聞いた話ではあるが、地下鉄で談笑していたところ、小さい子供から「変な言葉をしゃべるね」と言われたので、「日本語だよ、私たち日本人なの」と返したら、
「え?!日本人なのに、どうして軍服を着ていないの????刀は????\(◎o◎)/」
と言われたそうだ。
このように、年端もいかない小さい子供にまで“洗脳”が成功しているのであるから、何たるノーリスク・ハイリターンであろうか。
また、傍にいたというその小さい子供の保護者らしき大人も、この発言を咎めるでもなく、ニコニコと聞いていたというから、その“洗脳”がどれほどの作用であるのか、よくわかる。
日本人なら、傷ついて当然?
こちらにきて、もうずっと違和感を覚えていることのひとつに、
- 日本人なら、傷つけて当然。日本人は、傷ついて当然
と人々が思っていることだ。
教育水準も、文化水準も日本とはだいぶ異なるこちらであるが、人としての善悪の判断はどこにあっても普遍的であろうと思う。
しかしここでは、日本人に対しては、どんな言動をしようが、「愛国無罪」となってしまうのだ。
私には、これが時に耐えられなく辛く感じる。
そして、こちらにいる日本人は、少なからず中国に好感を持っているからこちらに来ている。
それなのに、どうしてそれを人民は理解できないのだろうかと、とても残念でやるせなく、悲しい気持ちになる。けだし、嫌だったらわざわざここには来ない。
環境の面でも、生活水準の上でも、生活の利便性の上でも、人権の面でも、日本に比べ物にならないくらい、ここは分が悪いのだから。
しかし、それがこちらの人々にとっては、微塵も想像できないことなのだ。
先日も、本当にやるせないことが起きて、今もその感情は自分の中で消化できていない。
でもまあ、“抗日”が一種の娯楽として広く受け入れられ、作用しているここでは、何を訴えようが、「嫌国有罪」。
ここに、わざわざのこのことやって来た私がすべて悪いのだ。
そう思って諦めるしかない。